高嶺の花たち

ヒトリシズカ(一人静) 静御前の名を継ぐ清楚な花

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ヒトリシズカ

ヒトリシズカの花は白いブラシのような花です。花だけみていると昔、理科室で見た試験管洗いのようか感じです。そういったら山仲間からデリカシーがないと言われました。
なにしろ花の名前が静御前からつけられたものですから。

静御前は源義経の恋人の白拍子です。さぞ美しい姿で舞ったのでしょうね。その静御前の美しさになぞらえてつけられた名前がヒトリシズカです。試験管洗いのブラシでは確かにデリカシーがない。一人とつくのは茎の先に一つの花をつけるからで、二つの花をつけるフタリシズカという花もあるそうです。

ヒトリシズカは山の斜面などに咲いています。残念ながら霧島ではあまり見かけたことがなく、私が見たのはもっぱら熊本の山々です。カタクリなどを訪ねて山行したときに登山道の横に咲いていたりしました。群生していることが多く、あの白いブラシのような花がニョキニョキと印象的です。

ヒトリシズカ

時に一本だけ咲いているヒトリシズカに出会うときがあります。ヒトリシズカは4枚を葉を同じところから出して、その上に白い花をつけます。そんなヒトリシズカの花は、まさに踊りを舞っているかのようです。

静御前のお話

静御前は悲運の女性です。義経が兄の頼朝に追われて落ちていくときに、吉野で義経から京に戻されますが、頼朝側に捕えられることになります。
その後、頼朝に白拍子の舞を命じられた静御前は、事もあろうに頼朝の前で義経を慕う歌を歌うのです。

しづやしづ しづのをだまき くり返し 昔を今に なすよしもがな
吉野山 峰の白雪 ふみわけて 入りにし人の 跡ぞ恋しき

吉野山に入りし人は、もちろん義経ですね。敵将の前で、なんという豪胆さでしょうか。居並ぶ武将たちも、さぞびっくりしたことでしょう。
ただ、この時、静御前は義経の子供を身籠っていました。頼朝は生まれた子供が女なら助けるが、男だったら殺すと命じます。頼朝の生い立ちを考えると当然かもしれません。頼朝自身も父、義朝が平治の乱で敗れ伊豆へ流されてのち平氏討伐の兵をあげたのですから。はたして生まれた子供は男子で海に沈められることになります。彼女の哀しみは如何ほどのものだったでしょう。

山の中で白い花を見つけたら、悲運の白拍子、静御前の雅な舞姿とその哀しみ思いながら愛でることにいたしましょう。その白い花が一層、可憐に映ると思います。

ヒトリシズカ データ

日本名 ヒトリシズカ(一人静)
場所 熊本の山々で見かけました
時期 4月中旬
学名 Chloranthus japonicus
科名 センリョウ科チャラン属
メモ

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