霧島市隼人町、日当山温泉郷の山手に蛍を見ることができる小川があります。その小川の脇に大きな楠木がある小さい神社があります。蛭子神社(ひるこじんじゃ)です。
最近建て替えられて綺麗な社殿になっています。私としては前の社殿の方が苔むした感じで趣があり好きでしたが、老朽化もあり致し方ないのでしょう。境内には大きな楠木があり静かな空間を形作っています。
このあたり一帯は「奈毛木の杜」(なげきのもり)と言われています。古くは和歌の題材として良く詠まれていたそうで歌枕とされています。
ねぎごとを さのみ聞きけむ社(やしろ)こそ 果ては なげきの杜(もり)となるらめ(古今和歌集)
「沢山の人の願い事を聞いてきた神社だから、嘆きの木が集まって森になるのだろう。」とう感じでしょうか。この和歌は色々と解釈があるようですが、ここは素直に読んでおきましょう。
ご祭神の蛭児尊(ヒルコノミコト)は伊弉諾(イザナギ)と伊邪那美(イザナミ)の最初の子供です。しかし、3歳になっても立つことが出来なかったので船(あまのいわくすの船)に乗せて流したのだそうです。可愛そうに・・・。その船が流れ着いたのが、この神社の場所という言い伝えがあり、伊弉諾、伊邪那美が嘆き悲しんだという事で「奈毛木の杜」というのだそうです。
ところで、その「あまのいわくすの船」の舵(かじ)が流れ着いたのが、今の加治木の浜で、地名の由来になっているという言い伝えもあります。
蛯子(ひるこ)は「えびす」とも読みますよね。「えびす」は蛭子の他に、恵比寿、夷、戎と色々な文字を使います。云われも色々あり蛯子尊の事とも言われているようです。
近くには「西郷どんの宿」という藁葺の旧家もあります。これは移築したものらしいのですが、静かな森の雰囲気と相まって良い雰囲気を醸しています。
蛯子神社の前は遊歩道になっており、春には街路樹として植えてある桜が綺麗です。初夏には蛍が舞い、夏になると楠の葉が良い感じに日影を作ってくれます。
この遊歩道は蛯子神社から鹿児島神宮まで続います。途中に石體神社などもあり神社散策、歴史散策には楽しい小径です。
蛯子神社 データ
所在 | 鹿児島県霧島市隼人町内2563 |
主祭神 | 蛭児尊(ヒルコノミコト) |
社格 | 村社 |
創建 | 寛永3年(1750年) |
例祭 | 6月16日 |
メモ | 通称:にのみやさん |